役員報酬や配当で利益を0にしたら、税金なしって本当??【UAE法人税】

投稿:2023年8月15日更新:2023年8月15日ブログ , 未分類

UAEの法人税法では、一会計期間に法人が獲得した利益(課税所得)の9%が法人税となります。
そのため、利益が大きければ大きいほど、それに従って法人税が発生することになります。

一方で、個人に対する所得税はいまだ0%であることから、「売上で得た収入をすべて役員報酬や配当に回してしまい、会社の手元に残る金額をゼロにすると、法人税はかからないのでは?」という話もさまざまな方面から聞こえてきます。

実際のところ、役員報酬や配当を通じて利益をゼロにすることで、法人税を完全に回避することは可能なのでしょうか?

日本における役員報酬や配当の規制

UAE(アラブ首長国連邦)では2023年6月から法人税が施行されましたが、まだ出来て間もない制度です。その一方で、日本では1899年に法人税制度が始まって以来、120年以上の歴史があります。

UAEで今後行われるであろう節税や税金に関する租税回避行為は、かつて日本でも行われ、その都度対策されてきた可能性が高く、UAEでも同様に法規制が強化されていくことが想定されます。

日本では役員報酬や配当に対してどのような規制がなされてきたのでしょうか。

役員報酬とは、取締役などの役員に対する給料であり、オーナー企業(会社の所有者と経営者が一致している会社)の場合、非常に調整がしやすい経費(損金)項目です。

日本では役員報酬を調整し、不当に法人税を減らすことを防止するために、以下いずれかの方法で報酬を支払った場合に限って損金計上を認めてきました。

1.「定期同額基準」
毎月決まった金額(同額)の役員報酬を損金とし、増減する部分は損金と認めない。
2.「事前確定届出基準」
税務署に支払金額と時期をに事前に届け出を行い、その通りに支払いを行った場合は損金を認める。

上記に逸脱した役員への支払いは、損金として認めないという厳密な規制が存在します。

なお、配当の支払いに関しては、税金が支払われた後の剰余金を原資とすることからそもそも損金として計上することが認められていません。

UAEにおける役員報酬や配当の規制

UAEでも、役員報酬や配当に対して一定の規制が設けられています。

まず配当の支払いに関して、オーナーに対する配当についてはその全額を損金として認めていません(法人税法33条4項)。そのため、配当を出すことは税金対策にはなりません。

一方で、役員報酬を上限なく個人に支払い出すことも難しいと考えられています。

会社の役員は、法人税法において関係者(Connected person)に該当し、関係者に対する支払いは時価(取引相場)を超える支払いについては損金として認めない旨が法人税法上明記されています(法法第36条1項)。

UAEの法人税制まだ始まったばかりの制度ですので、役員報酬の時価(取引相場)が厳密に定まっているわけではありませんが、法人税の制度が定まり、FTA(国税局)による税務調査が今後進むにつれて、役員報酬に関する課題が指摘されるケースも増えてくるものと思われます。
過去の税務調査結果や判例を元に、課題となる役員報酬の基準がある程度定まっていくでしょう。

現在はまだ過去事例が明確でないため、比較的多額の役員報酬を支払い出してしまっても否認される可能性は低いとも考えられますが、税務調査で指摘されると、罰金や延滞税などが課される可能性があります。
会社は役員報酬に関してもしっかりとした算定根拠を持っておくことが重要です。

まとめ

役員報酬や配当などの節税対策や各種スキームは、今後UAEでも増えてくるでしょう。

そしてこのような節税策は、日本と同様に新しく出て来ては対策される…といういたちごっこを繰り返し、納税者と税務当局の間で長く調整を繰り返しながら、より堅固な税制が出来上がっていくことになるのだと思います。納税者は認められた法律の範囲内で税金対策を行い、会社の存続のために資金を残すように努めることが重要だと考えます。

当会計事務所の代表は、UAEの公認会計士の資格を保有するとともに、日本で10年以上にわたり税理士法人を経営しており日本の税法や節税対策にも熟知しております。

今後の法人税の適用や税務申告に不安がある方は、ぜひ当会計事務所までご相談ください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

の記事一覧へ

コメントをどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。

法人税導入後、全ての会社で会計帳簿の作成が必須になります【ドバイ法人】

お気軽にお問い合わせください