法人税導入後、全ての会社で会計帳簿の作成が必須になります【ドバイ法人】

投稿:2023年8月15日更新:2023年8月15日お知らせ , ブログ

アラブ首長国連邦(UAE)では一定の事業を除き、法人税や所得税などのすべての税金が免除されていましたが、今後は2018年に導入されたVAT(付加価値税)に続き、2023年6月からは法人税が実施されることとなりました。

法人税が導入されて以降、ドバイで会社を経営している中小企業にとって必要な準備や対策はなにかあるのでしょうか。
結論から言うと、法人税導入後も税金の支払いが0の状態を維持することは出来ますが、法人税の申告は必ず必要になることから、会計帳簿の作成は必須になります。この点について、2023年現在の税制をもとに説明します。

法人税開始前まで求められていた手続

2023年6月以前は、法人税の適用はありませんでした。
UAEで事業を行う個人事業主や法人にとっては、会計といえば基本的にVATの計算だけを考慮するだけでよく、事務的な負担も大きくありませんでした。

また、コンサルティング業務やインターネット・ビジネスなどを行う法人は、売上の100%が海外向けである場合も多くあり、このような会社の場合はTax exemption(租税免除)をFTA(国税局)に申請することでVATの申告自体も不要でした。

売上が国内であがっている場合でも、一会計期間の売上高が375,000AED未満であればVATの登録は不要で、申告・納税も不要です。売上が375,000AEDを超える場合であっても、VATの登録を行い、一定期間(概ね3か月)ごとにVATに関する会計帳簿を作成し、FTAに申請すれば問題ありませんでした。

VAT以外の手続きとしては、UBOESRなどのコンプライアンス資料の提出義務がありますが、年に1度の提出のみであり負担は大きくありませんでした。

年に1度会社のライセンス更新行う際に、会計監査済の財務諸表を提出させるフリーゾーンに会社を設立している場合に限り、会計期間の帳簿を作成し、会計監査を受けた上で提出する必要がありました。しかし、こういったフリーゾーンは日本からの移住者には不人気で、こういったフリーゾーンに法人設立を行っている会社はほとんどなかったように記憶しています。

以上をまとめると、売上高が以下①②いずれかの条件を満たす場合はVATの申告・納税共に不要となり、会計帳簿の作成や決算も不要です。

①一会計期間における売上高が375,000AED未満である場合
②一会計期間における売上高の100%が海外向けである場合で、免除申請を行った場合

言い換えると、売上高が375,000AEDを超える会社で、かつUAE国内に売上高がある(VATを受け取っている)会社だけが会計帳簿を作成しておく必要があった、ということになります。
(厳密にいえばそれ以外の会社も会計帳簿の作成は必要ではありましたが、申告義務がなかったので、十分な準備をする必要に乏しかったという意味合いになります)。


法人税開始後に求められる手続

2023年6月以降は、ドバイに設立されているすべての法人が納税義務者となり、法人税の申告納税が義務付けられることとなりました(政府機関等を除く)。
これによって、売上高や従業員数に関わらず今後は法人税の申告が必要です。

具体的には、課税所得が375,000AED未満の会社については法人税率は0%であり、納税の義務はありませんが、法人税の申告は必要になります。

また、小規模事業者を救済するための施策として、課税所得(利益)だけではなく売上高が300万AED未満である法人も法人税率が0%になることが決定されましたが、こちらも同様に申告は必要になります。

課税所得が375,000AEDを超え、かつ売上高が300万AEDを超える場合は、課税所得が375,000AEDを超える部分については法人税率が9%となり、申告・納税ともに必要になります。

前章の「2023年6月以前の手続き」で説明したVATの申告に加え、今後は法人税の申告及び納税義務についても検討することが必要になりました。

これをまとめると、以下の通りです。

・課税所得が375,000AED未満の場合、法人税率は0%。ただし、法人税の申告は必要
・課税所得が375,000AED以上だが売上高が300万AED未満の場合、法人税率は0%。
 ただし、法人税の申告は必要
・売上が300万AED以上の場合、法人税率は9%。法人税の申告・納税ともに必要

課税所得や売上高の多寡に関わらず、今後は全ての中小企業が会計帳簿を作成し、財務諸表及び法人税申告書を作成することが必要ということが分かって頂けるかと思います。

まとめ

今後はUAEの全ての法人が会計帳簿の作成が必要となります。
従って、ドバイの税金がゼロであることにメリットを感じ、会計処理を特段行っていなかった法人についても、今後は適切な会計帳簿の作成と国税庁への届出が必要になります。

会計資料の作成は手間がかかるかもしれませんが、会計情報を十分に生かすことで売上をさらに増加させたり、利益を増やすきっかけが得られることもあります。また、会計資料の作成は必須になりましたが、今後も引き続き法人税を低く抑えることは可能です。

会計上の作業や会計監査に不安を抱えている方々や、税務上のアドバイスを求めている方々は、お気軽に当会計事務所にお問い合わせください。

 このブログを書いた人

税理士・公認会計士(日本・UAE)。ドバイ在住。日本とドバイで会計事務所を経営しています。税務顧問や会計監査、ドバイへの移住支援を行っています。

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